Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!( No.389 )
  • 日時: 2014/05/16 19:49
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: vLFUt9lY)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 五十四章 跳梁し意思用いず悪成さば

 合体したディア=ルテミスは巨大な斧となり、ソードモードとは比べ物にならないほど重々しい一撃となって降り下ろされる。
「くっ、重いぃっ……!」
 盾を先端に配して刃とするために、剣と盾を重ねて持つようになる。それ故に腕力で支持するにはかなり負担がかかり、所持者の隙はかなり大きくなってしまう。
 それだけ隙が出来るだけの重量を叩き付けるのだ。大剣には及ばないが、それに次ぐ威力はある。
 アックスモードのディア=ルテミスは、ゴア・マガラの後ろ足の鱗を弾き飛ばし、刃は肉に食い込んで火を撒き散らす。
「うぅおぉりぃやぁぁぁぁっ!」
 軸足を入れ替え、ディア=ルテミスを振り回すように振るうアスト。
 それに合わせて、柄からディア=ルテミスを操作し、ビンに蓄積されてあるエネルギーを解放してそれを斬撃に乗せて放つ。
 一、二撃とディア=ルテミスが振り抜かれゴア・マガラの後ろ足、横腹を捉える。斬撃の後から一拍置いて、緑色の爆発と共にさらに炎を燃え上がらせる。
 ディア=ルテミスに内蔵されているのは強属性ビンだ。刃に仕込まれている属性の威力をさらに底上げするというものだ。
 それらを叩き込むと、不意にゴア・マガラの挙動が変わった。
「グルゥッ……アァァァァァァァァァァッ!!」
 それは明確な怒りを持って放たれた怒号だ。至近距離にいたアスト、ツバキ、セージはその音量と恐怖に抗えずにその場で耳を塞いでうずくまってしまう。
 ゴア・マガラが怒りの咆哮を終えると同時に二人と一匹は正気を取り戻すが、ゴア・マガラは既に次の挙動を行っていた。
 ゴア・マガラは突然その場から羽ばたいた。
 その羽ばたきによって巻き起こる風圧にその場にいた二人と一匹は仰け反ってしまう。
「グアァァッ!」
 ゴア・マガラは翼を羽ばたかせながら、空中で狂竜ブレスを吐き出した。
 狙いは、ツバキだ。
「っ!」
 避けなくては、と頭が分かっていても、風圧に仰け反っている身体はすぐには反応してくれない。
 結果、受けの体勢を取ることも出来ずに、ブレスはフルフルメイルを直撃した。
「ぐあぁっ……!」
 狂竜ブレスを直撃したツバキは、衝撃に吹き飛ばされて草の上をのたうち回った。
「セルジュくんっ!……ちぃっ」
 ニーリンは吹き飛ばされたツバキを一瞥すると、リロードした火炎弾を弾倉から抜き取って別の弾を装填する。
 直ぐ様銃口をツバキに向けると、迷わずに引き金を引いた。ツバキを痛め付けるためではない。
 妃竜砲【遠撃】の銃口から、幾つもの小さな粒のような弾が放たれる。
 それらはツバキにぶつかると、中から液体が溢れて、ツバキに滴る。
 体力を回復させる弾、回復弾だ。薬莢に薬草や回復薬を仕込むことで命中させた対象の体力を回復させるものだ。最も、それはモンスターにも効果があるため、使い所は難しい。
「野郎っ!」
 体勢を取り戻したアストはディア=ルテミスを背中に納めると、距離を取ったゴア・マガラへ向かって走る。
「バカッ、突っ込むヤツがあるかニャ!」
 正面から突っ込もうとするアストを見て、セージは怒鳴る。
「グアァァッ!」
 ゴア・マガラは次にアストへ向けて狂竜ブレスを放った。
 しかし、アストの足は止まらない。
 アストはブレスが直撃する寸前、最小限のステップだけでブレスをやり過ごした。
 回避に余計な挙動を行わずに、一秒でも早くゴア・マガラに接近するためだ。
「こんのぉっ!」
 アストはゴア・マガラの首下に潜り込むと、ディア=ルテミスをアックスモードにしながら降り下ろした。
 その切っ先は、ギリギリゴア・マガラの首を捉え、鱗を斬り裂いた。
「グギャァオォォォッ!?」
 思わぬ部位を攻撃されたゴア・マガラは驚きながら激痛に悶えて地面に落下してきた。
 アストは内心で「よし」と頷くと、落下してきたゴア・マガラの頭に回り込む。
 激痛に苦しみのたうち回るゴア・マガラの頭部を睨むと、ディア=ルテミスを腰溜めに構える。
 柄による操作で、刃に当たる盾が四方に展開し、緑色の光を放った。
「フルパワーッ、属性解放斬りぃぃぃぃぃっ!!」
 アストは溜めていた腰の捻りを弾けさせ、ディア=ルテミスをゴア・マガラの頭部に全力で振り抜いた。
 凄まじい一撃と共にゴア・マガラの頭部を叩き潰し、連鎖的に爆発が何度も巻き起こる。
 盾に仕込まれたビンのエネルギーをより強く解放する一撃、高出力属性解放斬りだ。
 多くのモンスターが弱点とする頭部にこの会心の一撃。
 それでも、ゴア・マガラは倒れずに起き上がってくる。
「さすがにこれじゃ倒れてくれないか」
「構わんニャ。初めて放ったにしては上出来ニャ」
 アストは強制的にソードモードに切り替わったディア=ルテミスを構え直し、セージはその隣に立つ。
「グルゥッ……」
 ゴア・マガラはアストを睨むと、翼を羽ばたかせてその場から飛翔した。 
 このエリアから逃げるつもりだ。だが、ニーリンの当てたペイント弾の効果は健在だ。
 まずは体勢を整え直すことが第一だ。
「つぅっ……、っ!?」
 突然、ツバキの方からあからさまに動揺したような声が聞こえた。
「おい、どうしたセルジュくん?」
 回復弾だけでは足りないのか、とニーリンはツバキに歩み寄る。アストとセージもその方へ向き直る。
「ダメだ来るなっ!」
 しかし、ツバキは腕で自分の身体を抱くとニーリンに背を向けた。
「どうしたのだ?別に私は傷痕など気にせんぞ?」
「構うなっ、先に行っててくれ!」
 ツバキはその体勢のまま、ベースキャンプの方へ走ろうとする。
 だが、ニーリンはその肩を掴んでいた。
「そんなに『その身体を』見られたくないのか?」
「!?」
 その言葉で、ツバキはビクッと震えた。
「なぜ何も無さげなのにマカオンくんの所に用があったのか?答えは、それか?」
 ニーリンは、ツバキの脇から見え隠れしていたその白い包帯のようなものを引っ張った。
「ひあぁんっ!?」
 それを引っ張った途端、ツバキから可愛らしい悲鳴が洩れた。
「え?ツ、ツバキ……?まさか、お前……」
「ッ……」
 ツバキは観念したのか、アスト達に向き直った。
 フルフルメイルの前面はブレスによって無惨に破壊されている。
 が、問題はその下だ。
 ニーリンに引っ張られて緩んだ白い包帯のようなものの下から、押さえ付けていたその膨らみに耐えられずにその本来の形を露にしていた。
 アストの視線はそれに釘付けられた。
「お……女っ……!?」