Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!企画考案中!( No.504 )
  • 日時: 2014/05/28 17:30
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: z7janbML)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 六十一章 遥か彼方へ 〜シナト村編〜

 地底火山。
 火山というだけあり、その気温は灼熱。
 クーラードリンクといった体感温度を低下させる準備も無しにここへ踏み入るのは自殺行為とさえ言われている。
 過酷なこの地に棲息するモンスター達は、いずれも厳しい気温の中で生きる術を持っているため、強力なモンスターばかりだ。
 エリア8 。
 アスト、ニーリン、ツバキ、セージはその巨岩のようなモンスターと対峙していた。
「グゥオオォォアァァァァァッ!」
 モンスターは大きく息を吸って上体を持ち上げると、その口から凄まじい高熱のエネルギーを照射した。
「避けろニャ!」
 セージは三人に叫ぶように注意を促す。
 次の瞬間、それはエネルギー線上を焦熱に染め上げた。
 もしもあんなものを直撃したらと思うとゾッとする。
 アスト達が対峙しているのは、この地底火山に棲息する、鎧竜グラビモスだ。
 岩竜バサルモスの成体であり、その大きさはおよそで通常の大型モンスターの1.5倍に値するほどの巨体だ。
 巨体故に俊敏さはないものの、鉄壁の甲殻と全てを焼き尽くす熱線を備えた強敵だ。
 だが、アストの心中はグラビモスのことなど二の次になっていた。
(俺は……どうしたらいいんだ……?)
 ユリはアストに好意を抱いている。
 確かにユリは可愛らしいし、性格も優しくて気配りも上手い。
 だが、アストの中では何故か納得出来ないでいた。
 決してユリが悪いわけではない。
 それでも、どうしてかユリでは違うような気がしてならない。
「何ボヤッとしてるんだっ!?」
 ツバキに怒鳴られ、アストは我を取り戻す。
 グラビモスの巨体が、目の前にある。
 攻撃しなくては、とアストは地面を蹴る。
 今回のグラビモスに火属性は効かないだろうと判断し、片手剣のデッドリーナイフで来ている。
「うおぉぉっ!」
 デッドリーナイフの切っ先がグラビモスの腹を捕らえていく。
 硬い。とてもダメージを与えている気にはなれない。
「バカッ、なんで突っ込むニャ!?」
「えっ?」
 アストは思わず攻撃を止めてしまう。
「グオォ、ヴオォォォォォ」
 次の瞬間、グラビモスの身体から赤いガスが噴き出した。
 その赤いガスがアストを包み込むと、瞬く間にアストを守るスキュラシリーズを燃やす。
「があぁぁぁぁぁ……!?」
 全身が燃えるような痛みがアストを襲う。
 しかも、スキュラシリーズは火に弱い。
 吹き飛ばされながら、アストの意識が遠くなっていた。

 次に意識が戻った時には、アストはベースキャンプのベッドにいた。
「あ……?俺……?」
 スキュラシリーズは外され、全身各所に包帯が巻かれていた。
「起きたかニャ」
 セージは腕を組みながらアストを見下ろしていた。
 アストは動き直した脳で問い掛ける。
「グラビモスは……」
「もう狩ってるよ」
 冷ややかに答えるのはツバキ。
「一体どうしたんだい?いつものアルナイルくんらしくなかったじゃないか?」
 ニーリンも入ってくる。
 アストは返答に悩んでから答える。
「……、俺も分からない……ごめん」
 アストは頭を下げて謝る。
「謝る必要はニャい。だが、余計なことは考えるべきではニャいニャ」
 セージは溜め息をつきながら答える。
「とにかく、グラビモスは狩ったニャ。さっさとナグリ村へ帰って飛行船をつくってもらうニャ」
 そう、ミナーヴァは飛行船を作るためにナグリ村に訪れていた。
 しかし、地底火山にグラビモスが現れたとなれば話は早い。
 村に着いて早速狩猟の依頼をさせられた訳だ。
 アストはゆっくりと起き上がると、帰還の準備を進めていく。
 そんな中でも、アストは自分の心に悩んでいた。
「……」
 そのアストの背中をツバキは見詰めていたが、すぐに目を切って帰還の準備を整えていく。

 ナグリ村へ帰還するなり、土竜族達は雄叫びを上げながら地底火山へ殺到していった。
 それから、今のワルキューレを改造する形で飛行船が作られていく。
 その日々の中で、アストは座り込んで一人物思いにふける時間がほとんどだった。
 どれだけユリのことを考えても、最終的にはカトリアが頭に浮かんでいることにも気付いた。 
 なぜカトリアが浮かんでくるのだろうか。
「おややーっ?色ボケしてるアストさん、発見ですっ」
 不意に後ろからシオンが冷やかすような声をかけてきた。
 アストは振り返る。
「あのなぁ、色ボケって……」
「やっぱりユリさんのことですかっ?」
 シオンは堂々と座っているアストの隣に座り込む。
「それ以外何があるんだよ」
「一人で悩むよりっ、誰かに相談した方がいいかもですよっ」
 さぁどうぞ、とばかりシオンは待ち構えている。
 相談されてほしいのだろうか。
 一人で悩むよりはマシかも知れない、とアストはシオンに話を向ける。
「何となく、思うんだよ。なんか、こう、ユリじゃ何か違うって感じがね」
「ふむふむっ」
「それで、いつの間にかカトリアさんのことを考えてるんだよ。ユリのことを考えてるのに、なんでいきなりカトリアさんのことになるんだって……」
「ほほぅっ」
 シオンは確信を得たとばかり頷いた。
「おーけーですっ。アストさんは正直ですからよーく分かりましたっ」
「い、今ので分かったのか?」
「はいっ。でもですよっ、私がこの答えを言っちゃダメなんですよーっ」
「えぇ?」
 シオンの言葉に困惑するアスト。なぜ答えてくれないのだろうか。
「そんじゃ私はこの辺でーっ」
 そう言うと、シオンは飛び上がるように立ってその場を後にした。
「あっ、ちょ……」
「自分との戦いですよーっ」
 もうシオンが見えなくなってしまった。
 一人残されるアスト。元から一人だったが。
「どうしろってんだよ……」

 一週間後、土竜族達の不眠不休の仕事のおかげで無事にワルキューレは飛行船として生まれ変わった。
 型式も改められ、『イサナ級航空機動艦』の銘が与えられ、名前も『ワルキューレU』として変えられている。
 操縦性は以前と大差なく、離陸と着陸だけを気を付ければ良いのことらしい。
 早速、ミナーヴァの馬車が積まれていく。ユリとツバキの分の馬車も新たに作られ、かなりの大所帯となった。
「『イサナ級航空機動艦ワルキューレU』、発進!」
 やはりカトリアの号令と共に、ワルキューレUはゆっくりと離陸を始め、ワルキューレUは蒼空を飛翔し、雲を突き抜けていく。

 海を、山を飛び越え、時折旅のハンターに手を振られては降り返し、そこは見えた。
 天空山に囲まれた、小さな村。
 そこが、シナト村だ。