Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!企画発表!( No.763 )
  • 日時: 2014/06/12 11:16
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: R8wmQCW5)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 七十二章 最強の敵

 翌朝。
 眠れたのはほんの数時間だけだが、アストは自律的に起きた。
「……、朝か」
 いつものように起き上がり、いつものように身だしなみを調え、いつものようにルピナスの朝食へ。
 こんないつものようにが出来るのは、これで最後になるかもしれない。
 いや、違う。
 これからもこのいつものようにを続けるために、今日、ここまで来たのだ。
 逃げることはもう出来ない。
 確かな決意を胸に、アストは自室を出た。
 
 いつものように、本当にいつものように朝食は待っている。
 そこには当然、ユリも待っている。
 アストは彼女と目を合わせる。
「おはよう、ユリ」
 いつも通り、いつも通りでいいのだ。そう思って挨拶をするアスト。
 ユリは戸惑いを見せてから、アストの意図に気付いて、少しぎこちない微笑みで応えてくれた。
「おはよう、アストくん」
 これで少しは蟠りが解けた。
 これでいい。自分とユリはこのままでいいのだ。
 今はまだちぐはぐでも、いつかは元通りの笑顔を見せ合える。
 そのいつかを待つためにも、今日だ。
 ルピナスの作る料理も、いつもと変わらない。そんな彼女の優しさにも感謝するアスト。

 朝食を食べ終えたアスト達ハンターは、それぞれの自室で準備を整える。
 アストは、作られて間もないその紅蓮の鎧を身に纏っていく。
 リオレウスの素材を用いて作られた、レウスシリーズだ。
 一流ハンターの証でもあり、ハンター達の憧れの的でもあるこの防具はそれに恥じないだけの性能を持っている。
 武器もまた、リオレウスの素材を用いている。
 ディア=ルテミスをベースにしながらも、その形状は大きく変化しており、華美さを無くして、より武器然として生まれ変わったチャージアックス、炎斧アクセリオンだ。
 道具面でも、万全の万全だ。
 鬼人薬と硬化薬のグレート、秘薬といにしえの秘薬、回復薬は薬草とアオキノコとハチミツまで持ち込み、さらには生命の粉塵まで用意されている。
 入念に、何か抜けていないかを確かめ、それから道具袋の口をしっかり閉める。
「……よし」
 全ては整った。
 あとは戦うだけだ。
「アストくん、準備出来た?」
 ドア越しから声をかけてくるのは、カトリアだ。
「はい、今出ます」
 アストは道具袋を担いで、ドアを開ける。
 ドアの向こうから現れたのは、銀色のレウスシリーズ、シルバーソルを纏ったカトリアの姿だった。
 この姿を見るのは、地底洞窟でのドスゲネポスとネルスキュラの挟撃以来だ。
 文献などを読んでみると、銀色のリオレウスは、なんと希少種らしい。
 その希少種の装備を纏うカトリア……やはり、ただ者ではない人だ。
 今のカトリアは、優しく凛々しい団長でも無ければ、弱々しく儚げな少女でもない。
 狩人(ハンター)としての気に満ちた、これまでに見たことのない、そんなカトリアだ。
「さ……行きますか」
「えぇ」
 アストのつぶやきに頷くカトリア。
 カトリアには悪いが、今は彼女を見てドキドキしている時ではない。
 
 アスト、カトリア、ニーリン、ツバキの四人が揃う。
 シナト村の民と、ミナーヴァのメンバーに見送られている。
「……行ってらっしゃい。私は、ここで待ってます」
「壊れたんなら直してやるから、帰ってくるんだよ」
「今日の晩御飯はぁ、何がいいですかぁ?」
「ふぁいとーっ!ですっ!」
「心苦しいですが、怪我しないでくださいね?」
 エリス、ライラ、ルピナス、シオン、マガレットの五人それぞれが、万感の思いと共に送り出してくれる。
 ユリは何も言わずに、アストを見詰めている。
 アストはそれに対して、無言で力強く頷いてやる。
 分かる。今はこれだけでいいのだと。
 ユリも頷き返す。
 それを確認してから、アストは背中を向けた。
 続くように、カトリア、ニーリン、ツバキも背を向ける。
 吊り橋に足を掛け、村を出る。

 天空山ベースキャンプ。
 だが、今のここは天空山ではない。
 いつもの狩り場とは、正反対の位地……シャガルマガラが現れるだろう、禁足地だ。
 その閉ざされていた扉は開かれ、その奥から黒い何かがもれている。
 それは見紛うことのない、狂竜ウイルスだ。
「みんな、いい?」
 カトリアは全員に声をかける。
「いつでもいいですよ」
「問題ありませんぞ」
「オーケーです」
 アスト、ニーリン、ツバキはそれぞれ答える。
 それを確認して、カトリアは頷く。
 そして、禁足地へと、踏み出した。

 殺風景なそこは、周りが崖になっている。
 その中央に、白いような、金色のような龍が佇んでいた。
 龍……シャガルマガラは、ヒトの気配に気付いて向き直る。
「カトリアさん、怖いですか?」
 アストはカトリアに声をかけてやる。
「怖いけど、アストくんがいれば平気だよ」
 カトリアのその声は恐怖の混じったそれだ。
 だが、足を竦めてしまうことはなかった。
「やぁ、シャガルマガラくん。君が奏でてきた、ダ・カーポ(繰り返し)にはもう飽きているんだ」
 ニーリンはヘビィボウガン、レックスハウルを構える。轟竜ティガレックスの咆哮のような駆動音が鳴る。
「悪いが、ここで終わりにしてもらう!」
 ツバキは背中の鬼斬破を抜き放った。
「カトリアさんのためにも、お前を狩る……!」
 アストは炎斧アクセリオンをソードモードにする。
「過去じゃない……現在(いま)を生きるために、私は戦う。ローゼ、リア、フリージィ……見届けて!」
 カトリアは背中の操虫棍、開闘の焔竜棍を手に掛け、焔を吹き荒らしながら抜き放った。
「ゴオォウゥッ……ヴゥウォゥオォァァァァァァァァ!!」
 シャガルマガラが、敵対を意味する咆哮を上げる。

 ヒトの未来か、龍の凱旋か。輪廻の唄を奏でるのは、どちらか……。