Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!企画発表!( No.774 )
  • 日時: 2014/06/13 10:42
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: GuFdhShZ)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 七十三章 長き戦いの始まり

「さぁて……さっさと沈んでもらおうかい」
 開幕一番、ニーリンはレックスハウルの引き金を引き絞る。
 轟音と共に、ティガレックスの頭部を模した砲口から拡散弾が放たれ、シャガルマガラに直撃すると共に爆発を撒き散らす。
 さすがは古龍と言うべきか、この程度ではかすり傷も同然だろう。
 シャガルマガラはニーリンを睨み付けた。
「グゥオォアァァッ」
 翼から生えたその強靭な翼足を降り下ろし、ニーリンを踏み潰そうとする。
 ニーリンもそれを受けるわけにはいかないため、楽々と回避する。
 逆の翼足も続けて降り下ろすが、それも回避するニーリン。
「はっ、そんなものか。大したことはないな」
 ニーリンに注意が向いているなら、剣士三人が動いているだろう。
 アスト、ツバキ、カトリアは散開し、各々の狙いをつけていく。
 ツバキがいち早くシャガルマガラの後ろ足に取りついた。
「せぃやぁっ!」
 踏み込みと共に鬼斬破を振り抜き、シャガルマガラの鱗を捕らえ、雷狼竜ジンオウガの蓄電殻によってさらにパワーアップされた雷が走る。
 刃は通る。かなりの強度はあるようだが、ライラによって研ぎ澄まされた鬼斬破の鋭い一撃は防ぎきれない。
 ツバキは立て続けに鬼斬破を突き入れ、斬り上げ、一旦そこで斬り下がって距離を取る。
「行きますよ、カトリアさん!」
「アストくんっ、そっちも気を付けてね!」
 アストがシャガルマガラの懐に飛び込み、カトリアは斬り下がったツバキと入れ替わるように後ろ足に接近する。
「行きなさい、オオシナト!」
 カトリアは開闘の焔竜棍を振るい、彼女の右腕で待機している猟虫を放つ。
 操虫棍という武器の最大の特徴とも言える猟虫は、モンスターの体表に取り付かせ、その体液を吸収、猟虫の体内で再分泌を行ってヒトの体液の浸透率と同化させ、それを操者に注入させることで、身体能力を飛躍的に上昇、もしくは回復させると言う特殊な性能を持っている。
 ヒトの体内に注入を行う際は、無痛性の浸透針のように行われ、ごく微弱なショックはあるものの、猟虫が分泌する体液が瞬時に消毒も行うため、実質の害はゼロである。
 その猟虫一つでも無数の分類があり、与える餌によって個体の進化が変わっていく。
 カトリアが従えるオオシナトは、元々スピードに特化した猟虫なのだが、彼女はさらに極端なまでにスピードを上昇させたそれは、強い雷属性を持つと同時に、ボウガンの弾と見紛うばかりのスピードを持つ。
 音速のオオシナトは一瞬でシャガルマガラの後ろ足から体液を吸収し、白く発光する。モンスターによって異なるが、吸収させた部位によって発光する色が変わり、白は脚力の強化を意味する。
 カトリアは再度開闘の焔竜棍を振るい、瞬時にオオシナトを呼び戻す。呼び戻されたオオシナトはカトリアの右のシルバーソルアームの関節部を通じて、彼女にその分泌した体液を送り込む。
 その瞬間、カトリアの動きが変わった。
 地面を蹴ると、跳躍して一気にシャガルマガラに肉迫する。
「はあぁっ!」
 全身ごと叩き付けるように開闘の焔竜棍を振り抜き、シャガルマガラの後ろ足に、細身の柄からは想像も出来ないほど重々しい一撃が捕らえる。
 直視すれば分かる。カトリアのその技を放つためにどれだけの筋力を用いてるかを。彼女の華奢な四肢の内側にそれを制御出来るだけの力があることを。
「グゥオォォォッ」
 シャガルマガラは身体の向きをカトリアに変えながらも、突進の姿勢に入り、その六本の脚で地面を蹴散らす。
「っ!」
 シャガルマガラの注意が自分に向いたことに恐怖を感じてしまったカトリアは一瞬足をすくませた。
 彼女の危険にいち早く気付いたのは、アストだ。
 アストは彼女とシャガルマガラの間に割り込み、炎斧アクセリオンの盾をしっかり構えた。
 直後、シャガルマガラの角と炎斧アクセリオンの盾が激突する。
「うおぉぉぉぉぉっ……!」
 アストは歯を食い縛ってその突進からカトリアを守る。
 どうしても後退はしてしまうため、カトリアとぶつかってしまうが、あの巨体に蹴り飛ばされるより遥かにマシだ。
 ようやく突進が止まり、シャガルマガラはそこで足を止めた。
「大丈夫ですか!?」
 アストは横目でカトリアの無事を確かめる。
「う、うんっ……!」
 カトリアは頷いてくれた。
 カトリアさんには傷付いて欲しくない、とアストは心を引き締める。
 シャガルマガラの背中で爆発が躍る。
「人の恋路を邪魔する奴は、地獄に堕ちるぞ?シャガルマガラくん」
 ニーリンは拡散弾発射の反動に身体を仰け反らせながらも、余裕めいた言葉を絶やさない。
 レックスハウルは、轟竜ティガレックスの頑丈な素材をフレームに組み込むことで、拡散弾はもちろん、徹甲榴弾を複数装填可能、かつ高い出力を持つのが強味だが、その反面ブレ幅が大きく、さらにその高い出力を発揮するための反動も大きいため、本来ニーリンが得意とする狙撃には向かないものの、爆薬を仕込んだ弾丸を乱れ撃つそれは、全てを吹き飛ばす轟竜ティガレックスそのものだ。そのうえ、ニーリンが纏うセルタスシリーズには砲撃を強化する性能も備えられており、それは徹甲榴弾の爆発も強化させるのだ。
 その爆発をも掻い潜って、ツバキが再びシャガルマガラの背後から接近し、尻尾に鬼斬破を放つ。
 無数の爆発を直撃し、雷と炎に挟まれたシャガルマガラもさすがに怯んだ。
「グォウゥッ……」
「いいぞ、効いている!」
 アストも体勢を立て直すや否やシャガルマガラの腹にソードモードの炎斧アクセリオンを叩き付けていく。
 まだ終わりは見えない。
 だが、確かな希望を抱いて、アスト達は強大な壁に立ち向かっていく。