Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!企画考案中!( No.863 )
  • 日時: 2014/06/22 02:19
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: RhuRuM5P)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 終章 輪廻の唄

 あれから、一年が経った。
 シャガルマガラの討伐に成功してから、ミナーヴァは再びバルバレに戻った。
 ユリとツバキは、今度こそギルドに保護されて、いるべき居場所に帰っていった。
 ユリはこう言っていた。
「アストくんからたくさんの勇気を貰ったから、吹っ切れた。だから私はあるべき姿に戻ります」
 そう言い残し、ツバキと共に旅立った。今度会うときは、どこかは分からないが、どこかで会えるだろう。何せ、彼女は大陸を股にかける歌姫なのだから。
 ニーリンも、ミナーヴァとの長期契約の期限が過ぎたために、多額の報酬金を受け取ってミナーヴァを離れた。
「一度は勘当されたが、顔を見せるくらいはいいだろう」
 彼女の実家はバルバレから遠く離れた大陸にあるらしい。
 彼女にとって肉親は憎むべき存在だが、腐っても親。自分の子を心配しないはずがない。
 マガレットも故郷に戻り、開業を始めたいらしい。
 こうして、ミナーヴァは結成されたばかりのメンバーだけとなってしまった。
 ただ、一人の少年と、一匹のオトモアイルーを除いて。
 
 再び『暁の奏姫』を名乗り始めたユリは、今日もどこかで観衆を前にその歌声を響かせていた。

 春風に揺られ舞う桜 とても愛しくて
 夏の日差しに目を細め 招かれた星空へ
 紅葉の秋に包まれて 静かな実りを拾う
 粉雪舞い散るこの冬に 温もりを探して
 spring(春) summer(夏) autumn(秋) winter(冬)
 この季節は繰り返す
 翼広げて舞おう この空を
 一緒にいよう この時を
 共に歩もう この道を
 二人で奏でよう この唄を
 I feel so your love (私はあなたの愛を感じている)

 歓声に包まれる会場の外で、ツバキは一人の少年と話し込んでいた。 
「いいのか?顔くらい見せてやったらどうだ?」
 フルフルSシリーズを装備しているツバキは、その蒼火竜リオレウス亜種の防具、リオソウルシリーズを纏う少年と、会場の舞台で歌うユリを見比べた。
「いいさ。今ここで会わなくても、また会えるさ」
「そうか……もう、行くのか?」
「悪いな、ツバキ。俺は、会いたい人に会いに行きたいんだ。じゃあな」
 彼はツバキに背を向けると、その場を立ち去った。
 彼のオトモアイルーもしかりだ。
「……『私』も恋人作ろっかな?」
 ふと、ツバキは本当の自分に戻った。

 船旅の途中、ニーリンはある一人の少年とオトモアイルーと出会っていた。
「いやはや……まさか君達とこんなところで会うとはなぁ。世の中、何が起こるか分からないな」
 リオハートシリーズを纏うニーリンは、その少年とオトモアイルーを見て微笑んだ。
「さすがにあの時はヤバイと思ったなぁ。でも、会いたい人に会いたい一心で生き長らえたというか……」
「君は変わらないなぁ、いや全く……それは私もか?」
「たった一年少しじゃ、人は変わんないさ」
 少年は分かったような口振りをする。
 ふと、船が港に近付く。
「っと、俺達はここで降りるよ。じゃあな、ニーリン」
「うむ。道中お気を付けてなぁ」
 ニーリンは船室へ向かう彼とオトモアイルーを見送った。
「末長く、お幸せにな」
 ドアに隠れた彼の背中に、静かに呟くニーリン。

 カトリアは、今日も自室で自分の業務をこなしていた。
 シャガルマガラの討伐によって、ミナーヴァは大衆からは英雄のように見られていたが、その功績者のほとんどがもういない。
 故に英雄呼ばわりもすぐに鎮静化し、元の様子に戻るのも時間はかからなかった。
「……よっし、完了っと」
 長い長い月日の末に、カトリアは立ち直った。
 きっと彼は生きているはずだと、いつか自分の前に現れてくれるはずだと、そう信じて生きるようになった。いや、そうでなくては生きられない。
 大量の書類の片付けを終えて、カトリアは背伸びをする。
 気晴らしに、外へ出ることにした。
 エリスはハンター達に依頼を紹介してやり、ライラは様々な依頼の品を造り上げ、ルピナスは飯時の客を相手に奮闘し、シオンはせっせと接客をしている。
 バルバレは相変わらず人が行き交う。
 この人混みの中にいるのでは、と毎日期待しながらも見つからず、そんな一年が無為に過ぎていった。
 今日も見つからない。
 カトリアは落胆し、俯いた。
 俯く内に、涙が流れてきた。
 道行く人はどうしたのかとカトリアを一瞥するが、すぐに通り過ぎていく。
 そんな中、一人の少年が話し掛けてきた。
「何をそんなに落ち込んでいるんですか?」
 オトモアイルーも続く。
「大方、お前を探して見つからないから、だろうがニャ。どっちもどっちもバカだニャ」
「おいおいセージ、そこまでバカ呼ばわりしなくてもいいだろうが」
 カトリアは、顔を上げた。
 そこにいたのは、純白の毛並みのオトモアイルー、セージ。
 そして、そのセージの隣にいる、リオソウルシリーズのハンターだ。
 リオソウルヘルムで顔は分からない。
「あ、あなたは……?」
 蒼い瞳を潤ませ、カトリアは問い掛ける。
 それに答えるように、リオソウルシリーズの少年は、ヘルムを脱いでその顔を晒した。
 短い黒髪。少しだけ鋭くなった、赤い瞳。まだ少年の面影が残るその輪郭。
「……!!」
 カトリアは両手で口を隠しながら目を見開いた。
「ただいま、カトリアさん。遅くなりました」
 そう……彼は帰ってきたのだ。
 カトリアは涙を溢れさせ、彼の少しだけ逞しくなった身体に抱き付いた。
「おかえり……おかえりなさい……!!」
 堪えることなど知らない赤子のように、カトリアは泣いた。
 嬉しさと、嬉しさと、嬉しさにだ。
 もう二度と離すものかと言わんばかりに、カトリアは彼を抱き締める。
 彼も、優しくカトリアを抱き止めた。
 一年ぶりに互いの温もりを感じられた。
 今は、それが何よりも嬉しい。

 季節は廻り、一つの物語がようやく、本当の始まりを迎えたーーーーー。

 HAPPY END……